前回のコラムで、「自社の強み」を活かせる分野を軸の1つとして事業を見直し、成長につなげた事例を紹介しました。「自社の強み」とはすなわち「顧客から選ばれる理由」です。
経営者の方と事業計画について検討していると「自社の強み」と「自社の良さ」を混同していることがあります。例えば「アットホームな社風」や「ベテラン社員が多い」ことは「自社の良さ」かもしれませんが、必ずしも「顧客から選ばれる理由」になるとは限りません。
「顧客から選ばれる理由」は顧客ニーズや顧客が比較検討する競合メーカーによって変わるので、どんな顧客・市場に注力して事業を展開するか、自社の強みを踏まえて考える必要があります。
「強み」を持続させるためには企業の持つ「資産」に裏打ちされていなければなりません。「資産」に支えられていない「強み」は他社にすぐに真似される可能性が高いからです。ここでいう「資産」とは貸借対照表に書かれている「資産」には限りません。例えば金型の細密加工の技能者などの人的資産、人材育成制度やITを活用した業務システムなどの構造的資産、顧客や協業企業など外部との関係資産も「強み」になり得ます。
最も重要なことは、「注力する顧客・市場」と「強み(顧客から選ばれる理由)」、「保有する資産」の三つに一貫性があることです。これらが明確になっていれば、M&Aのマッチングで売り手・買い手の立場にかかわらず、自社にとって適切な候補を見つける一助になります。もし適切な相手が見つからずにいるなら、再検討してみてはいかがでしょうか。